近年書籍やYoutubeなどの動画などのコンテンツを中心に少しずつ学習を始める人が増えてきている「地政学」
今回は、そんな地政学における基礎的な考え方であるランドパワーとシーパワーについて、それぞれどのようなものなのか、詳しく解説していきたいと思います。
ランドパワーは「大陸国家」
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58617299/picture_pc_9d4f053bbc17cd952f988da2c11f0593.png?width=800)
ランドパワーとは「大陸国家」のことを指し、陸上交通などの陸路が中心の物流となっています。
また、海路を封鎖されてもある程度持続可能であり、陸上戦力が強いという特徴を持っています。
ランドパワーの場合は陸上の防衛を考えていれば、国家の経済・防衛を守ることができます。
代表的な国としてはロシアや中国、ドイツやフランスなどの国が挙げられ、これらの国は海を目指して進出する傾向があります。
産業革命後は鉄道建設などによりランドパワーの陸上輸送力が大きく向上したことでランドパワー優位とも言える状況が生まれました。
シーパワーは「海洋国家」
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58618618/picture_pc_729ae78679e25f78df955e5111c3dae5.png?width=800)
シーパワーとは「海洋国家」のことを指し、海上交通などの海路が中心の物流となっています。
また、陸路を封鎖されてもある程度持続可能であり、海上戦力が強いという特徴を持っています。
シーパワーの場合は海洋の防衛を考えていれば、国家の経済・防衛を守ることができます。
代表的な国としてはアメリカやイギリス、スペインやポルトガルなどの国が挙げられ、これらの国は海を目指して進出するランドパワーの国々と対立する傾向があります。
大航海時代には、スペインやイギリスを始めとしたヨーロッパの国々が海へと進出し覇権を争うなどシーパワー優位とも言える状況が生まれました。
アメリカはなぜシーパワーなのか?
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58618638/picture_pc_d0494676b7e2fc902e239e55d82edc79.png?width=800)
アメリカの場合、北アメリカ大陸に脅威となる競合がいなかったため、北アメリカ大陸を東から西まで早い段階で開拓し尽くしてしまいました。
その結果、アメリカは北アメリカ大陸を島国のようなものとして捉えることができ、カリブ海や太平洋などの海を介して様々な国に影響力を持つようになりました。
以上のような背景から、現在アメリカはシーパワーとして考えられます。
日本はランドパワー?それともシーパワー?
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58618651/picture_pc_3b2b0b5188d138ee4a7b19ddb99f2638.png?width=800)
ここまでランドパワーとシーパワーについて説明してきましたが、日本はランドパワーとシーパワーのどちらにあたるのでしょうか。
これまでの日本の歴史も踏まえて解説していきます。
日本は島国で四方を海に囲まれているため、シーパワーとしてのポテンシャルを持つ国家ですが、古来より、国内の覇権を争って日本国内での争い事が絶えなかったため、内向きのランドパワー国家でした。
その後、明治時代に入り中国大陸の覇権の目指すなど、陸を目指しながらランドパワー国家としての力を伸ばしていきました。
基本的に陸上戦力が強いため陸軍の権力が大きくなっているというのも特徴です。
その後、太平洋・東南アジアの獲得を狙い、陸と海の両方の獲得を目指しましたが失敗し、現在ではアメリカの同盟国としてシーパワー国家の一員となっています。
ハートランドとは?
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58618667/picture_pc_d76bde9abca021f980394371d2f4d14d.png?width=800)
ハートランドとは、ユーラシア大陸の中心部にあたるロシア周辺のエリアを指します。
ハートランドの北部の海は北極に近いため年中氷に覆われており、海路として機能しないためハートランドに属するロシアのような大国は南へ進出する傾向があります。
ハートランドにおいては輸送が限られることから外敵から襲われにくいですが、逆に古来より文明があまり栄えないという特徴があります。
気候は寒冷で住める地域が限られており、作物が育てにくいという特徴もあります。
ハートランドの多くを占めるロシアは、世界一の領土を持つ大国ですが、前述したようなハートランドの特徴から、現在のところロシアのGDPは上の図の通り日本やアメリカなどの国々よりも低く、オーストラリアと同程度となっています。
リムランドとは?
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58618690/picture_pc_dc092ee3560b4af4a7211652e72afba4.png?width=800)
リムランドとは、前述したハートランドの周辺(縁)にあたるエリアのことを指し、ユーラシア大陸の海岸線に沿った形となっています。
ヨーロッパや中東、東南アジアなどが含まれ、気候や土地に恵まれており、リムランドでは文明も多く繁栄しています。
争いの絶えない「リムランド」
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58618701/picture_pc_2cb6967da4e4a5e023b7a56a0f2039d8.png?width=800)
地図を見ると分かるように、リムランドはランドパワーとシーパワーの国の境となるエリアであることから、両国家の勢力の衝突が起きやすく大規模な争いの事例が多いエリアとなっています。
ハートランドに存在するランドパワー国家が海洋へ進出しようとした結果、リムランドに存在するシーパワー国家の影響の大きい国々が自身のテリトリーを守ろうとして衝突が起きるということが必然的に起こる仕組みとなっています。
【リムランドと大規模な争いの例】
○中東|イラク戦争, 中東戦争, アフガニスタン戦争
○朝鮮半島|朝鮮戦争
○東南アジア|ベトナム戦争
○ヨーロッパ|第一次世界大戦, 第二次世界大戦
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こちらは「戦略の地政学 ランドパワーVSシーパワー」という、地政学について基礎からかなり深いところまで学ぶことができる、秋元千明氏による地政学の入門書となっています。
特に本書はタイトルの通り、「ランドパワーVSシーパワー」をテーマとしており、米日中露などを中心としたランドパワー・シーパワー国家双方の考え方や戦略についても詳しく紹介されているので、興味がある方は是非ご一読ください。
まとめ
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58618720/picture_pc_1ee55360978461cbdfef635912713ee9.png?width=800)
いかがでしたでしょうか、今回は地政学の基本的な考え方となるランドパワーとシーパワーについて解説しました。
二つの勢力の特徴が掴めてくると、国際政治や軍事に関するニュースがより分かりやすくなると思います。
地政学にはまだまだ重要な考え方が多くあるので、ぜひ皆さんも勉強してみてください。
これからも地政学に関する情報を発信していこうと思いますので、引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。
【参考文献】